革の見極め

「革の価値とは」

革の製品について少し語りたいと思います。
高い革と安い革は何が違うのか。最近良く出回っている革もどきのような革はどういうものなのか。私の思いを素直に文にしたので言葉も荒く、読みづらいかもしれませんが、是非最後までご覧いただけると嬉しいです。

先日革所ではじめてクレームがきた。といってもお客様が悪いわけでは全然ありませんし、すごくご理解のある方でご期待に答えることができず申し訳ない気持ちになりました。

薄い小傷があるから交換して欲しいという、前職の頃にもよくあった事。

価値のある本物の革とは

「何故傷があるのか」

革って生きてた牛だから人間と同じで虫刺され跡とか傷とか血筋とかシワとかがあって当たり前なんだけど、ツルツルの部分もある。お腹周りなどは柔らかくボコボコとシボがある。ツルツルの部分だけ使って商品を作るならその分値段を上げないといけないし傷などのある部分は廃棄になる。頂いた命を捨てることにもなるしゴミを出すことになる。

革は10×10cmで何円という値段の付け方をされているけど、買う時は裁断されてない一枚の大きな革で買うのでツルツルの部分だけを選んで買うことはできない。
もちろん同じ種類の革でも傷の多い革もあれば少ない革もある。一枚の革から商品を何個作れるのかの計算になるので、例えば一枚6万円の革から1商品しか作れなければ材料費だけで6万になる。
なので多少の皺や小傷がある箇所も含めて商品にしないと価格は跳ね上がることになってしまう。
価値のある本物の革とは
つっるつるの部分で作ると一枚の革から2個ほどしか作れない…
もちろん私も目立つ傷がある場所は避けて作るし、人工的な傷がある場所は絶対に使わない。製作の際にも傷がつかないよう注意している。
前職の時にクレームがトラウマのようになっているから(一人のお客様に6時間ほど電話対応したこともある)クレームが来そうな所は怖くて使わない。私も夫も前職で凄まじい量の商品を検品して来たからその基準を元に判断してる。
ただそういう激しめのシボや黒子などの味のある部分はかっこいいと思っているので「くせ者」として販売してる。こういう革らしい革を好きな人もいる。少ないけど。
価値のある本物の革とは
目立つ深い傷
価値のある本物の革とは
深い傷は裏側まで

「安い革は何故安いのか」

多くの企業はクレームが嫌だから、安くて合皮みたいな革?を使用した商品を作り多く出回っている。何故か傷も皺もないつるつるの革が「いい革」と認識されてているが、実際はそうでもない。
安く売られてる革は傷などを隠す為に化学合成物質をもの凄く使って綺麗に加工してる。厚化粧をしてる感じ。革の匂いもしない。合皮のようになる。元の革の状態が悪い低ランクとされる革でも見た感じ綺麗に仕上がるから元も安いし手間暇をかけないでいいから安く仕上がる。
革は漉いて厚みを調節するんだけど、使用する表面の部分じゃない方(床革)に表面に合皮を貼りつけて「牛革」として販売されてたりもする。なんなら商品の60%が本革なら「本革」として販売してもいいことになってる。
そうゆう安い革は経年変化というより劣化したようになるけど売るときに綺麗でクレームにならないし安いし利益もでるし。そうゆう物の需要の方が高いし。
食べ物なども同じで安い食べ物程添加物とか沢山使われてる。国産じゃなくても国産と言えたり。安い物には安いなりの理由があるし、いい物はちゃんと高い。
これはこれで売り物にならない革が利用されて無駄が減っていいのかもしれないけど、「本革」や「上質なレザー」なんて謳って販売してるので革のイメージを狂わせてしまってると思う。本来の革は安く捌いてはいけないし安くできない。「安い物」「傷のない物」が当たり前という認識になってしまう。価値が下がる。
職人の技術もどんどん失われていく。手間をかけていい革を仕上げても評価なんてされず、売れないし使いにくいとされる。革本来の持ち味なんて殺して楽して安い物の方が需要があるから売れる。商売を考えたら後者になる。
どこにでもあるような表情のない革?に私は魅力を感じないし死んだ革とさえ思ってしまう。 
そして化学合成物質をふんだんに使うのがいいと思わないから私は使わないし出来たら使わないで欲しい。
 

「手に入らない」

ムラのない美しいレザーを作るには、生まれて二ヶ月くらいの仔牛かすごく綺麗な肌の牛。そんなの人間でもなかなかいない。だから希少価値が高くて高額になる。あの透明感の塊の綾瀬はるかさんと私とでは天と地の差があるのと同じである。
しかもその希少価値の高いレザーは資金力のある一流ブランドが優先して買い占める。メゾンブランドのレザー製品が綺麗なものばかりなのは元々がすごく美しいレザーを使っているから。数十万円とかが当たり前。ロゴ入り金具とかデザインとか、細部も全てにお金がかかってる。あと莫大な宣伝費も。

「何を選ぶか」

日本は傷もムラもない革を「よい革」と判断する人が多い。傷などがあれば不良品だと思ってしまう。不良品だから交換するのが当たり前だと簡単に言う。傷などがあるのが本当に価値のある本革なのに。
通販会社も対応が大変だから不良品でなくても返品交換をすぐしてしまうけど、返品された商品はどうなるの。正直往復の送料がきついから避けたい。となるとリスクの少ない革の商品にするか、利益を出す為に高値にしておくか、薄利多売で大量生産したりどんどん廃棄もだしていくか…

私が使ってる革はやたら高くて売れなくて職人が困ってた革。正直この値段で販売するものではないし出来ないと思う。価値を下げることになるからしてはいけないと思ってたしそもそも利益もでないし。しかも私は一枚革で作るのが好きなんだけど革の取り分が大きくて難しいから尚の事この値段にできない。けどいい物が売れずに眠ってるなら誰かが使わないと価値も何もない。利益よりもいい物を広めて、職人に作り続けてもらいたい。

でももし私達の商品に需要が生まれたとしたら、こんな世の中も少し変わるのかもと思って革所をはじめた。本当にいい物の価値を下げず上げていきたい。見てくれに騙されず、真実に目を向けていい物を手にして欲しい。全然売れてないし綺麗事だと言われると思うけど、私達の心が折れない限り革所を続ける。

長くなりましたが今回はこの辺りでおしまいにします。

最後までお読みいただきありがとうございました。