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「革所はじめ」

初めまして。革所の谷口です。
Blogでは商品の事や、私自身の生活の事など色々と書き綴っていきたいと思います。
今日は「革所のはじまり」を書きたいと思います。

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私は以前、通販会社のWEB製作や商品企画などに携わっていました。
合皮の商品や本革の商品を取り扱っていたのですが、通販会社だからなのか安価の合皮商品がよく売れました。
しかし合皮の商品はやはりどうしても長持ちはせず、劣化してしまいクレームが入ることもありました。
「ハイブランドはこんな事にならない!」などと購入から数年経過しているお客様からクレームを頂くこともありました…
さらに安いからなのか酷評が商品レビューに書かれることがあり、「届いたけどいらなくなったので捨てました。」とレビューに記載されたことがあり凄く悲しい気持ちになりました。デザインした物が喜ばれなかった事に対してはもちろん悲しく申し訳なかったのですが、商品が出来上がり、お届けするまでに携わってくれた沢山の人や材料に使われた物が粗末に扱われた事を思うととても悔しかったのです。
地球のゴミを増やすことになってしまった事も申し訳なく思いました。
しかし長年勤めていくうちに「そういう事」になれてしまい、傷つきたくないからか仕方ないと思うようになり、あまり深く考えないようになってしまった自分がいることに気づきました。

もちろん、合皮が悪いわけではなく大切に使ってくださる方も沢山いますし、汚れや水に強かったり合皮のいいところも沢山あります。

本革の商品を販売しているときに一番多かったのが、「皺や傷があるので気に入らない」という声でした。確かに合皮より高値ですし、綺麗な物が欲しいという気持ちもわかります。
しかし皺や傷などは本革である証拠、生きていたという証なのです。ケガや虫刺されの跡、おなか周りの皺など、生きていたからこそできた”跡”なのです。それが手に入る事に私は少しロマンを感じます。

「私は本革が好きなのです。」

傷も皺も変な跡も独特な匂いも手触りも使っていくうちに出る風合いも長持ちな所もすべて本革ならではのあの感じ丸ごと大好きなのです。

本当なら商品に生前の牛の写真を同封して「この子の革です」と添えてお送りしたいのです。すごく大切にしたくなりませんか?ただの物ではなく”命”だと再確認できると思います。いつか実現させたい夢です。

でもやはり皺や傷がある部分は商品としての評価が低いため使われず、無駄になったり、革職人たちを悩ませています。
職人たちは傷などが目立たないように加工したりと手間をかけて頑張っています。

そうして手間をかけた分素敵な革が沢山出来上がっています。手間をかけた分、革の単価は上がりますがロスが減ります。

私も、私たちが普段口にしている家畜、革まで余すことなく、命の無駄を少しでもなくす事がしたいと思っています。

「くせ者」について

加工をしてもどうしても目立ってしまう傷や皺があります。

私たちの商品がお客様のお手元に届いて、思っていたのと違う…と悲しい気持ちにならないよう、目立つ皺や傷のある”くせ”の強い商品は「くせ者」として販売します。

くせのある物を愛していただける方に愛していただければ嬉しいです。

革所ロゴ

粗末に扱われる命がなくなり、本来のあるべき姿を表現できる場所であり、
命ある革に関わる全ての生き物が幸せである場所を目指して。
そんな思いを込めて「革所」と名付けました。

ロゴマークは昔からある糸巻紋をモチーフに作りました。

糸巻紋

江戸時代の頃には、長い糸に長寿や子孫繁栄の願いを込めて嫁ぐ際に糸巻き文様の着物や帯をもたせたようです。
当時の女性にとって織物は重要な仕事でもあり、糸巻きは大切な道具であり、糸巻き文様には手仕事が上手にできるようにとの願いも込められていたようです。
また、古代の日本では糸巻き全般を千切(ちきり)と呼ばれており、千切は2つのものを結ぶという役目から人と人との仲を結んだり、愛を交わす「契り」にも通じるということで縁起が良いとされました。

「革所」という文字はその糸で文字を書いているイメージです。

革製品は末永く使えます。
必要なものを永く、子供にまで継げるように。
破棄される”物”が少しでも減りますように。

ゆっくりではありますが、職人たちと一緒にひとつずつ作っていく商品を見ていただけると嬉しいです。

長くなりましたが今回はこの辺りでおしまいにします。

次回は革所の「人」、かかわる人、職人についてなど書きたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。